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最高裁判所第一小法廷 昭和35年(オ)464号 判決 1960年9月01日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人軸原憲一の上告理由第一点について。

しかし所論公職選挙法四八条二項において、投票管理者が代理投票の補助者を選任するにつき、投票立会人の意見を聞くべきことを規定したのは、代理投票の自由公正を担保せんがためであることは所論のとおりであるが、投票管理者は元来投票立会人の意見に拘束されるものではなく、ただその意見を参考として斟酌することがあるをもつて足るものと解すべきものであるから、それと同趣旨の判示をした原判決は正当である。

所論はひつきよう右と相容れない独自の見解に立つて原判決に所論の違法ある如く主張するに帰するから採るを得ない。

同第二点について。

しかし当該選挙の候補者の長男が投票管理者となることは、そのこと自体決して好ましいことではないが、いまだもつて選挙の規定に違反するものではなく、またかかる投票管理者が、投票立会人の意見を聞かず、自己の一存で代理投票の補助者を選任することは、選挙の管理規定に違反するものではあるが、原判示のような事情が認められる場合、所論一七票を悉く無効投票としなければならぬわけのものではない。原判決が特にそのうち六票だけを無効としたのには理由のあることであり、原審の確定した事実関係の下において、右判断は正当として是認し得ないわけのものではない。

所論はひつきよう右と相容れない独自の見解に出ずるものであるから採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高木常七 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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